短距離を指導していると、
「それ、本当にそうなのかな?」
と思う考え方に出会うことがあります。
もちろん競技に正解はありません。
私自身も高校時代から現在まで考え方が変わったことはたくさんあります。
ただ、選手時代と指導者になった現在を振り返ると、
「もっと早く知っていれば遠回りせずに済んだかもしれない」
と思うこともあります。
今回は高校短距離でよく見かける勘違いを5つ紹介したいと思います。
① 走り込みを増やせば速くなる
おそらく最も多い勘違いです。
確かに走り込みによって体力は向上します。
最後まで動ける身体を作ることもできます。
しかし、短距離競技は最終的に速く走る技術を競う種目です。
走り込みだけで技術が向上するとは限りません。
私は地区の強豪私立高校と比較すると、かなり少ない走行距離でチームを運営しています。
それでも県大会入賞や東北大会出場を目標にし、実際に結果も出してきました。
もちろん走り込みを否定しているわけではありません。
体が非常に強く、怪我をせず、もともと高い技術を持っている選手であれば、走り込みによってさらに力を伸ばせる場合もあります。
しかし多くの選手は、技術的な課題を残したまま走行距離だけを増やしてしまいます。
その結果、
「体力はついたけれど走りは変わらない」
ということも少なくありません。
大切なのは走る量ではなく、何を目的に走るかだと思っています。
② スタート練習をたくさんすれば速くなる
100mという種目はスタートの印象が強い競技です。
そのため、
「まずはスタートを速くしよう」
と考える選手も多くいます。
もちろんスタートは大切です。
しかし私はスタートが100m全体に占める割合はそこまで大きくないと考えています。
以前、スタートの重要度は100m全体の5%程度という内容の記事を読んだことがあります。
数字の正確性はさておき、考え方としては近いものを感じています。
私が重要だと考えている順番は、
加速
↓
中間疾走
↓
スタート
↓
後半
です。
実際、私が指導した100m10秒87の選手もスタート型ではありませんでした。
むしろ中間疾走から後半にかけて伸びるタイプでした。
スタート練習ばかり行っても、加速や中間疾走の技術が身についていなければ大きなタイム向上にはつながりません。
100mはスタートだけで決まる種目ではないと思っています。
③ 地面を叩く音が大きいほど良い接地である
SNSなどを見ていると、
「バチン!」
という大きな接地音を良いものとして扱う場面があります。
しかし私は必ずしもそうとは思いません。
大切なのは音そのものではなく、その音がどのように生まれているかです。
私は接地を見る際に、
・どこに接地しているのか
・どのポイントで加重しているのか
・どのタイミングで加重しているのか
・どのタイミングで地面から離れているのか
といった部分を重視しています。
また、音が小さい場合でも、
・音が鈍すぎないか
・接地が軽すぎないか
・加重によって得た衝撃が頭の先まで抜けているか
といった部分を確認します。
音だけを切り取れば判断を間違えることがあります。
大きい音だから良い。
小さい音だから良い。
ではなく、
その接地によって前へ進めているのか。
そこが最も重要だと考えています。
私は高校時代よりも社会人になってから、この部分を強く意識するようになりました。
見た目や音だけで判断せず、本当に前へ進む力につながっているかを見ることが大切だと思います。
④ 成長期だから何もしなくても速くなる
私自身、高校時代はどちらかと言えばこの考え方でした。
速くなりたい気持ちはありました。
しかし、
なぜこの練習をするのか。
何を改善するためなのか。
そこまで深く考えていたわけではありません。
高校卒業後も競技は続けましたが、大学では週5日あった練習が週3日程度になりました。
技術練習もあまり行わなくなり、自分の走りを分析することも減りました。
その結果、
11秒21
↓
11秒12
と、大きくは伸びませんでした。
もし成長期だけで速くなるのであれば、この時期も自然に伸びていたはずです。
しかし現実は違いました。
その後、社会人になってから再び競技へ本気で取り組み、
動画分析
技術練習
走りの理解
を徹底した結果、
11秒25から10秒70まで記録を更新することができました。
成長期は確かにあります。
しかし、それだけで速くなり続けるほど短距離競技は簡単ではありません。
⑤ 速くなったのは全部自分の努力
これは私自身が最も反省していることかもしれません。
高校時代の私は、
速くなったのは自分の努力のおかげ。
そう思っていた部分がありました。
しかし社会人になって競技を続ける中で、自分の考え方は大きく変わりました。
高校時代の顧問の先生は、決して多くを語るタイプではありませんでした。
当時の私はその意図を理解できていませんでした。
ですが、自分で試行錯誤を繰り返す中で、
・どこに接地するのか
・どのポイントで加重するのか
・どのタイミングで加重するのか
・いつ脱力するのか
・いつ地面から離れるのか
そういった技術的な考え方の多くが、実は高校時代の指導につながっていたことに気付きました。
また、仲間やライバルの存在も大きかったと思います。
一人では今の競技人生はありませんでした。
だから今は、
速くなったのは自分だけの力ではない。
そう思っています。
まとめ
高校短距離には様々な考え方があります。
私が今回紹介した内容も、一つの考え方に過ぎません。
ただ、私自身が選手として競技を続け、指導者として高校生と向き合う中で感じてきたことでもあります。
遠回りに見えることが近道だったり、
正しいと思っていたことが勘違いだったりすることもあります。
だからこそ、
考えることをやめないこと。
これが短距離競技において最も大切なのかもしれません。
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