私は陸上に業務改善を持ち込んでいた

指導論

考える選手は伸びると思っていた

私はこれまで、

「考える選手は伸びる」

と思っていました。

実際、自分で考えられる選手は伸びることが多かったからです。

しかし指導を続ける中で、ある違和感を覚えるようになりました。

考えているのに伸びない選手がいるのです。

反省もしている。

質問もしている。

自分なりに考えている。

それでも思うように成長しない。

なぜだろう。

その答えが少し見えたのは、最近のことでした。


考えることと成長することは違う

私は以前、

「考える選手は伸びる」

と思っていました。

しかし今は少し違います。

考えること自体に価値があるわけではありません。

大切なのは、

考えたことが次の行動に繋がることです。

どれだけ反省しても、

どれだけ分析しても、

次に何をするのかが決まらなければ成長には繋がりません。

仕事で言えば、

会議だけして何も変わらない状態です。

課題は見つかっている。

反省もしている。

でも改善されない。

それでは意味がありません。

私が指導した選手の中には、毎回練習後に振り返りを書き続けた選手がいました。

反省もする。

質問もする。

自分なりに考えている。

それでも思うように伸びない。

一方で、振り返りの量は少なくても大きく成長する選手もいました。

当時の私は、その違いを説明できませんでした。


伸びる選手はPDCAサイクルが機能している

最近、私が伸びる選手に共通していると感じているのは、

PDCAサイクルが機能していることです。

計画する。

実行する。

確認する。

改善する。

そしてまた実行する。

この流れが自然に回っています。

やる気だけでも足りません。

考えるだけでも足りません。

整理するだけでも足りません。

それぞれが繋がり、次の行動に変わって初めて成長になります。


100mの選手が教えてくれたこと

私が指導した選手の中に、100mで10秒87まで伸びた選手がいます。

彼の特徴は修正能力でした。

ただし、全てを一人でやっていたわけではありません。

予選や準決勝を走った後には、私もアドバイスをします。

動画も確認します。

次のレースで何を修正するのか一緒に考えます。

しかし実際にレースで実行するのは本人です。

100mはスタートしたら終わりです。

走っている最中に指導者は介入できません。

風向き。

身体の状態。

スタートの感覚。

中間疾走の感覚。

そういった情報を自分で受け取り、

予選から準決勝へ、

準決勝から決勝へ、

修正していく必要があります。

彼はその能力が非常に高い選手でした。

だから伸びたのだと思います。


高跳びの選手が教えてくれたこと

一方で、高跳びの選手にはまた違う形の修正能力があります。

高跳びは100mとは競技特性が異なります。

同じ高さに3回まで挑戦できます。

さらに1本跳ぶごとにコーチングエリアへ戻り、指導者からアドバイスを受けることができます。

最近ではスマートフォンですぐに動画を確認することもできます。

つまり、

跳ぶ

動画を見る

コーチの意見を聞く

自分の感覚と照らし合わせる

次の1本で試す

という流れを競技中に行うことができます。

言い換えれば、高跳びという競技にはPDCAサイクルを回しやすい仕組みが最初から組み込まれているのです。

棒高跳びも同じです。

試技の間隔が長く、動画確認もしやすい。

握りや助走の調整も可能です。

競技中に改善を繰り返すことができます。

先日、ある高校2年生の選手が書いた練習メモを見る機会がありました。

そこには、

今日できたこと

できなかったこと

原因

改善案

次回やること

が整理されていました。

私はその内容以上に、

考え方に驚きました。

PDCAサイクルが機能し始めていたからです。

まだ完成された選手ではありません。

むしろこれから伸びていく途中です。

それでも、

「できなかった」

で終わらず、

「次はどうするか」

まで考えていました。

そのメモを見た時に初めて、

考える選手が伸びるのではなく、

PDCAサイクルが機能している選手が伸びるのではないかと思いました。


限られた時間で何をするか

振り返ると、私は社会人になってから会計事務所で働いていました。

かなり忙しい職場でした。

限られた時間の中で仕事を終わらせるためには、

何をやるのか。

何を後回しにするのか。

何を優先するのか。

を常に考える必要がありました。

さらに、

疲労度によって最適解も変わります。

頭が疲れている日は単純作業を進める。

集中できる時間帯に重要な判断を行う。

そうやって効率を考えていました。

今思えば、陸上も同じでした。

練習時間は限られています。

3時間あれば何でもできるわけではありません。

身体が疲れている日もあります。

精神的に疲れている日もあります。

その中で、

今何をやるべきか。

今何が一番効果的か。

を考える必要があります。

全部やろうとするのではなく、

今必要なことを選ぶ。

それもまた成長するための重要な能力だと思います。


私が教えていたのは技術だけではなかった

私はこれまで、

接地や加速、踏切といった技術を教えていると思っていました。

もちろんそれも教えています。

しかし最近は少し考え方が変わりました。

私が本当に教えていたのは、

現状を把握すること。

課題を見つけること。

優先順位を付けること。

改善すること。

そして限られた時間やエネルギーをどう使うか考えること。

つまり業務改善そのものだったのかもしれません。


最後に

私は長い間、

「考える選手は伸びる」

と思っていました。

しかし今は違います。

伸びる選手は、

PDCAサイクルが機能している選手です。

現状を把握し、

課題を見つけ、

改善し、

確認し、

また修正する。

そして限られた時間や体力、集中力を適切に使う。

振り返ると、それは陸上だけの話ではありませんでした。

仕事も同じです。

勉強も同じです。

資格試験も同じです。

私は陸上を教えているつもりでした。

でも実際には、

陸上を通して業務改善を教えていたのかもしれません。

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