短距離をやっていると、一度は
「地面を蹴れ」
と言われたことがあると思います。
実際、私も何度も聞いてきました。
しかし私は選手に対して「地面を蹴れ」とは言いません。
なぜなら、その言葉が選手の動きを悪くしてしまう可能性があるからです。
今回は私が「地面を蹴れ」と言わない理由について書いていきます。
私は高校1年の時に肉離れをした
高校1年。
陸上部に入部して最初の大会でした。
少年B100m。
私は準決勝で左ハムストリングを肉離れしました。
今思えば当然だったのかもしれません。
当時の私は、
「頑張れば頑張るほど速くなる」
と思っていました。
だから頑張りました。
全力で走りました。
そして全力で地面を蹴っていました。
結果として肉離れ。
しかも私はそのまま痛い状態で決勝も走っています。
今思えば無茶苦茶です。
ただ、この肉離れは私にとって大きな経験でした。
なぜなら私は肉離れを「エラー」だと考えているからです。
肉離れは結果であって原因ではない
もちろん疲労による肉離れもあります。
しかし私の中では、ハムストリングの肉離れは動きのエラーが起きた結果であることが多いです。
トップ選手でも肉離れをします。
しかしその背景を見ると、
- 焦りによる力み
- 接地位置のズレ
- 過度な筋力トレーニング
- 動作の乱れ
などが見えてきます。
つまり肉離れそのものではなく、その前に起きているエラーが問題なのです。
高校1年の私はそのエラーに気付いていませんでした。
ただひたすら頑張って地面を蹴っていました。
「蹴れ」と言われたら何を想像するか
ここで一つ質問です。
目の前にサッカーボールがあります。
「蹴れ」
と言われたら何をしますか?
ほとんどの人はボールをキックすると思います。
足を後ろへ引き、
勢いよく前へ振る。
これが一般的な「蹴る」のイメージです。
では、
「押せ」
と言われたらどうでしょうか。
おそらくボールを踏んだり、体重を乗せたり、転がしたりすると思います。
少なくともキックはしません。
ここが私の中で大きな違いです。
言葉は動きを作る
選手は真面目です。
指導者が言ったことを一生懸命やろうとします。
だからこそ、
「地面を蹴れ」
と言われれば、
地面に対してキック動作をしようとします。
私もそうでした。
しかしその結果、
- 上半身が前に突っ込む
- 足が後ろに流れる
- 力みが増える
という状態になっていました。
実際に高校時代の私はそういう走りでした。
一生懸命頑張っているのに前へ進まない。
今振り返ると、言葉から作られたイメージに引っ張られていた部分もあったと思います。
私が「押せ」と言う理由
私は選手に対して
「押せ」
と言います。
もちろん足裏全体でベタッと踏めという意味ではありません。
私の言う「押す」は加重です。
自重を適切なポイントへ伝えること。
その結果として大きな力が地面へ伝わります。
私はよく、
「押せ=加重」
だと考えています。
だから地面を引っ掻くような動きにはなりません。
足を後ろへ振り抜こうとする動きにもなりません。
体重を適切に伝えようとする動きになります。
動きが変わると接地音も変わる
実際に「押す」ができるようになった選手を見ると変化があります。
接地音が変わります。
足の回転も変わります。
特に足が後ろへ流れにくくなります。
前回転の選手でも後ろへ流れることはあります。
しかし以前より明らかに減ります。
そして足裏が空を向くような動きはほとんど見られなくなります。
動きが変わると音も変わる。
これは指導現場でもよく感じることです。
同じ言葉でも選手の解釈は違う
面白いことに、私の生徒たちは「押せ」と言われた時に私とは少し違うイメージを持っているかもしれません。
ただ、おそらく地面を引っ掻こうとはしません。
骨盤から体重を伝えようとすると思います。
これは普段から加重や腰の切り替えを共有しているからです。
つまり指導で大切なのは言葉そのものではありません。
その言葉からどんな映像を選手が思い浮かべるかです。
だから私は「地面を蹴れ」と言わない
地面を蹴るという表現が絶対に間違いだとは思いません。
実際、それで伝わる選手もいるでしょう。
ただ私は使いません。
なぜなら私自身がその言葉を真面目に受け取り、遠回りをした経験があるからです。
そして今も選手たちを見ていると、言葉一つで動きが大きく変わる場面を何度も見ます。
だから私は今日も
「地面を蹴れ」
ではなく、
「押せ」
と言います。
その方が私の伝えたい動きに近づくからです。
関連記事






コメント