短距離指導をしていると、
「足首が硬いので柔らかくした方がいいですか?」
という相談を受けることがあります。
確かに一般的には、足首が硬いことは短距離選手にとってマイナスだと言われることがあります。
よく言われるのは、
・ストライドが狭くなる
・フラット接地ができない
といったものです。
もちろん間違いではありません。
しかし私は、足首が硬いこと自体が欠点だとは思っていません。
実際に私が指導した選手の中には、足首が非常に硬いにもかかわらず100m10秒87まで記録を伸ばした選手がいました。
今回は「足首が硬いことは本当に欠点なのか」について、実際の経験をもとに書いていきたいと思います。
足首が硬い選手は本当に不利なのか
一般的には、足首が硬いとフラット接地が難しくなります。
フラット接地とは、足裏全体に近い形で地面に接地し、効率よく力を伝える考え方です。
私自身も、足首が柔らかい選手にはフラット接地を指導することがあります。
そのため、指導を始めた当初は足首が硬い選手にも同じような指導をしていました。
しかし、ある選手を見ていて違和感を覚えました。
何度フラット接地を意識させても上手くできないのです。
最初は技術的な問題だと思っていました。
ところが観察を続けていくと、原因は技術ではなく身体の特徴にあることが分かりました。
その選手は足首が非常に硬かったのです。
そして骨盤が立っており、日本人選手の中では少し珍しい身体的特徴を持っていました。
無理に修正しないという選択
指導者として考えなければいけないのは、
「できないことをできるようにする」
ことだけではありません。
「その選手の長所を消していないか」
という視点も必要だと思っています。
この選手の場合、フラット接地は苦手でした。
しかし実際の走りを見ると、フォアフット接地でもしっかり加重できていました。
一般的には、
「フォアフット接地になると地面を捉えられない」
と言われることがあります。
しかし、この選手には当てはまりませんでした。
むしろ接地時間は短く、反発をうまく利用できていました。
無理にフラット接地へ修正した場合、せっかくの特徴を消してしまう可能性もあります。
そこで私は、
「フラット接地ができないこと」
ではなく、
「その接地でしっかり加重できているか」
を見るようになりました。
足首が硬いことによるメリット
私が感じる足首の硬い選手のメリットは大きく3つあります。
接地時間が短くなりやすい
足首が硬い選手は、地面に長く乗り続けることが少なくなります。
そのため、接地が短くテンポの良い走りになりやすい傾向があります。
フォアフット接地でも加重できる
一般的にはフォアフット接地は難しいと言われます。
しかし足首が硬く、身体の使い方が上手な選手は、フォアフット接地でも十分に加重できます。
その結果、反発を利用した走りにつながることがあります。
キレのある動きを作りやすい
私が指導の中で重視しているのは腰の切り替えです。
足首が硬い選手は、この切り替えが上手くハマると非常にキレのある走りを見せることがあります。
実際に10秒87まで伸びた選手も、この特徴を持っていました。
私は逆のタイプだった
一方で、私は足首が柔らかいタイプです。
身長179cm、体重77kgで100m10秒70まで記録を伸ばしました。
私の場合は、
・前傾姿勢を作りやすい
・フラット接地がしやすい
・ストライドを出しやすい
という特徴がありました。
そのため、起き上がりから加速しながら伸びていく走りが得意でした。
同じ短距離選手でも、身体の特徴は全く違います。
それでも結果として速く走ることは可能です。
だからこそ私は、
「理想のフォームに全員を当てはめる」
ことはあまりしません。
指導者として考えていること
私は選手の骨格や癖をすべて修正しようとは考えていません。
もちろん改善した方が良い部分はあります。
しかし、その選手の武器になっている特徴まで消してしまう必要はないと思っています。
実際に10秒87まで伸びた選手も、足首の硬さを無理に修正することはしませんでした。
むしろ、
「この身体でどう速く走るか」
を考える方が重要でした。
選手によって正解は違います。
足首が柔らかい方が良い選手もいます。
足首が硬い方が良い選手もいます。
大切なのは、その選手の特徴を理解することです。
まとめ
足首が硬いことは、一般的には欠点として語られることがあります。
しかし私は、足首が硬いこと自体が問題だとは思っていません。
実際に100m10秒87まで伸びた選手は足首が硬く、フラット接地も得意ではありませんでした。
それでも自分の身体的特徴を活かしながら記録を伸ばしました。
短距離走において大切なのは、
「理想のフォームに近づくこと」
ではなく、
「自分の身体を理解して最大限活かすこと」
だと思っています。
今後も選手一人ひとりの特徴を見ながら、その選手に合った指導を続けていきたいと思います。
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