選手から動画が送られてくると、
「どこが悪いですか?」
と聞かれることがあります。
しかし正直に言うと、フォームのミスを見つけるだけならそんなに時間はかかりません。
接地が前なのか。
腰の切り替えが遅いのか。
上体が起きるのが早いのか。
そういった現象そのものは数秒見れば分かります。
ではなぜ私は何度も動画を見返すのでしょうか。
それはフォームを見るためではありません。
原因を探すためです。
動画で見えるのは結果だけ
例えば接地が前になっている選手がいたとします。
多くの人は、
「接地が前ですね」
で終わります。
しかし私にとってそれは原因ではありません。
結果です。
本当に知りたいのは、
「なぜ接地が前になったのか」
です。
腰の切り替えが遅れたのか。
疲労していたのか。
前傾が維持できなかったのか。
体力が足りなかったのか。
別の原因があるのか。
動画に映っているのは結果だけです。
原因は映っていません。
だから私は動画を見ながら原因を探しています。
私が腰の切り替えを見る理由
私はよく「腰の切り替え」という言葉を使います。
実はこれも、フォームの形を見ているわけではありません。
例えば、ちょこちょこと走ってしまう選手がいます。
そういう選手を見ると、腰の切り替えの高さが低いことがよくあります。
膝の高さ付近で切り替わっていたり、膝と腰の中間くらいで切り替わっていたりします。
すると脚が前に流れやすくなり、接地も前になりやすくなります。
だから私は腕振りや膝の高さそのものではなく、
「どこで切り替わっているのか」
を見ています。
そして、その現象がなぜ起きているのかを考えています。
動画を見る時間のほとんどは原因探し
実際のところ、フォームの異常を見つけるだけなら数秒で終わります。
私が何度も動画を見返しているのは、
「なぜそうなったのか」
を考えている時間です。
最近の自分の100mもそうでした。
最初は技術の問題だと思っていました。
しかし何度も見返しているうちに、
前半はそこまで悪くない。
腰の切り替えも極端には崩れていない。
それなのに後半だけ大きく失速している。
そう考えると、技術ではなく体力要因ではないかという仮説が出てきました。
そこから、
スピード持久力。
振動耐性。
内臓疲労。
そういった方向に考察が進んでいきました。
動画は答えを教えてくれません。
答えを考えるための材料をくれるだけです。
分からないこともある
もちろん原因が分からないこともあります。
特に当時の自分の情報が少なかったり、生徒から伝わってくる情報の解像度が低かったりすると難しくなります。
「なんとなく変でした」
だけでは分かりません。
どこで。
何が。
どんな感覚で。
いつから。
そういった情報が必要になります。
だから私は動画だけではなく、選手の感覚や言葉も大切にしています。
気持ち悪いのは分からないことではない
私は分からないこと自体は仕方ないと思っています。
競技は複雑ですし、人間は機械ではありません。
しかし一つだけ気持ち悪いことがあります。
それは、
分からないままにしておくことです。
だから私は動画を見ます。
考えます。
仮説を立てます。
改善してみます。
また動画を見ます。
その繰り返しです。
私が動画を見ているのは、フォームを探すためではありません。
原因を探すためです。
そして、その原因を少しでも明らかにするために、今日も動画を見続けています。
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