短距離の練習では、ウォーミングアップの最後などに「流し」を行うことが多いと思います。
私も普段の練習で流しを取り入れています。
しかし、流しを見ていると、
ただゆっくり走っている選手もいれば、逆にどんどんスピードを上げてしまう選手もいます。
私が流しで見ているのは、単純な速さではありません。
全力で走るときに理想としているフォームを、70〜80%のキレ・スピードで再現できるか。
ここを重視しています。
今回は、私が流しで速さよりもフォームを見る理由についてお話しします。
流しはダラダラ走るものではない
「流しは全力ではない。」
そう聞くと、力を抜いてゆっくり走ればいいと思うかもしれません。
しかし、私はそれも違うと考えています。
私が求めているのは、全力時の理想のフォームを70〜80%程度で再現することです。
全力ではありませんが、動きにはキレが必要です。
ただダラダラ走るのではなく、
軸や腰の切り替え、接地など、自分が全力で走るときに理想としている動きを再現します。
速度を落とすことが目的なのではなく、
速度を落とした状態だからこそ、理想の動きができるかを確認する。
私は流しをそのように考えています。
全力でできないなら、70〜80%ではできるのか
例えば、全力で走ったときに腰の切り替えが遅れている選手がいたとします。
そこで私は、
「もっと速く切り替えよう。」
と言うだけでは終わりません。
まず確認したいのは、
70〜80%なら切り替えられるのか。
ということです。
全力ではできなくても、速度を落とせばできるのであれば、その選手は動き自体を全く理解していないわけではありません。
反対に、流しでも同じ動きになっているのであれば、まだ技術面には大きな伸びしろがあります。
私はすべての動きに共通して、
ゆっくりできることが技術面の評価になる
と考えています。
難しい動きを速いスピードの中だけで偶然できることよりも、余裕のある状態で自分の動きをコントロールできることの方が大切です。
流しでできても全力になると崩れる選手
もちろん、
流しではできるのに、全力になるとできなくなる選手もいます。
この場合、私は特に二つのことを考えます。
一つは、力みです。
速く走ろうとした瞬間に力が入り、流しではできていた動きが崩れてしまいます。
もう一つは、
「普段の走り方が一番速く走れる」という固定観念です。
流しでは新しい動きを試せても、
全力になった瞬間、
「速く走らなければ。」
という意識が強くなります。
すると、結局いつもの走り方へ戻ってしまいます。
せっかく流しで良い動きができていても、全力になると元通りです。
だからこそ私は、
流しと全力を別々の走りとして考えるのではなく、
流しで作った良い動きを、少しずつ全力へ近づけていくこと
が大切だと考えています。
調子が良くても流しで頑張りすぎない
流しをしていると、
「今日、かなり動けるな。」
と感じる日があります。
そうすると、そのままスピードを上げたくなる選手もいます。
しかし私は、
流しでそこまで頑張ってほしいとは思いません。
70〜80%で良いフォームを再現できているのであれば、
その先は本メニューで頑張ればいいからです。
流しで必要以上にスピードを上げると、地面を蹴る動きが強くなり、腰の切り替えが遅くなることがあります。
さらに、ウォーミングアップの段階で必要以上に速度を上げれば、怪我のリスクも高くなります。
調子が良いことを確認できたのであれば、それで十分です。
その感覚を本メニューへ持っていけばいいと考えています。
私は流しの中でも修正する
私は流しを見ていて動きが違うと感じれば、その場で選手に修正点を伝えます。
例えば、
「今は蹴っている。」
「切り替えが遅れている。」
といったように、本人が動きを修正できるように感覚を伝えます。
練習時間には限りがあるため、流しだけを何本も繰り返して完全に修正してから本メニューへ進めるわけではありません。
それでも、
本メニューに入る前に、自分が今どんな走りをしているのかを知ること
には意味があります。
流しは体を温めるだけの時間ではありません。
その日の自分の動きを確認し、必要であれば修正する時間でもあります。
流しは全力のフォームを作るための時間
私が流しで求めているのは、
速いタイムでも、
全力に近いスピードでもありません。
全力で走るときに理想としているフォームを、70〜80%で再現できること。
ここです。
全力でできない動きがあるなら、
まず流しではできるのか。
流しでもできないのであれば、
まだ技術的に改善できる部分があります。
流しではできるのに全力で崩れるのであれば、
力みや固定観念など、別の原因を考えることができます。
ただダラダラ走るのでもなく、
速さを競うのでもない。
余裕のある速度で、自分の理想の走りを再現する。
私は、それが流しの大切な役割だと考えています。
まとめ
私が流しで重視しているのは、
70〜80%のキレ・スピードで、全力時の理想のフォームを再現できるかどうかです。
流しでできないからといって、全力で絶対にできないとは限りません。
しかし、余裕のある速度でもできないのであれば、技術面にはまだ伸びしろがあります。
逆に、流しではできるのに全力になると崩れるのであれば、その差に改善のヒントがあります。
流しは、
ただ本メニューの前に走るだけのものではありません。
全力では見えにくい技術を、速度を落として確認できる時間。
そう考えると、いつもの流しから得られるものも変わってくると思います。
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